(2000年11月19日から)


  釜山日本語教師会 発表原稿

 アスペクトについて  

                     2000.11.19発表 2000.11.19改  あきづき やすお


1.瞬間動詞/継続動詞

  金田一春彦(1955)によれば、述語の叙述形は、その種別により各時制形式で主に次のようなテンスを
担う。

これをふまえて金田一は、上の表の「テイル形」の有無と性格によって、つぎのような4分類をした。

 *『わざ』(アルク)に のっている「いきている」「しんでいる」の導入


2.瞬間/継続という分類への疑問

 ・よく教科書にでている「~テいる」「~テある」の区別

         進行     結果
   
自動詞   --    あいている
   
他動詞  あけている  あけてある

 ・この表に対して ただちに生ずる疑問!

 * 自動詞は全部、「瞬間動詞」なのか?
 * 他動詞は全部、「継続動詞」なのか?
 * 「あく」と「あける」では、時間のながさが ちがうのか?


3.問題の整理

 ・~テいる/~テある

   ふたつの ちがいは、なんなのか?

    ~テいる  途中/(主体の)結果状態の残存
    ~テある  - /(対象の)結果状態の残存

    ★中立的な「~テいる・ある文」       ★松本清張

 ・自動詞・他動詞

   「~テある」が つかえる動詞とは?
      のむ たべる けす 着る 愛する かなしむ……?

   なぜ ふたつに分類しようとするのか?

 ・瞬間・継続

   ほんとうに区別できるのか?         「やま(を/に)のぼっている」


4.十字分類(学説史)

  上の表で、[b]は金田一の分類でいう「継続動詞」
       
[c]は「瞬間動詞」
       
[a]は「テイル形」が文脈により進行相も結果相も表しうる動詞

 動詞をえだわかれ式に分類するのではなく交差分類するにあたっては、動詞の属性表示のために
+/-による素性表示が簡便である。油谷(1978)の整理にしたがい、以下のような方式をとることにする。

    [a][-状態][-瞬間][+結果]  [b][-状態][-瞬間][-結果]
    
[c][-状態][+瞬間][+結果]  [d][-状態][+瞬間][-結果]


5.[d]枠は なにを意味するか(韓国語との対照研究)

 [d]に あたるのは、「テいる」形が進行相にも結果継続相にも ならない動詞であるけれども、そんな動詞
が あるのだろうか。主体変化をひきおこさなければ、「テいる」は、むりやりにでも進行相として解釈される
傾向がある。(たとえば「この瞬間にボールをうっています」。)「失恋する」が[d]だとすれば、それは主体に
変化があっても、すぐにその状態がさらに別のものに変化してしまうために痕跡がみえず、そのうえ、それが
生起する瞬間もまた意識できないからではないか。

         参考:「人生の節目を越えている」「難局をしのいでいる」

・ ところで油谷は、うえの定義を韓国語に援用して、韓国語動詞をアスペクト素性によって分類している。

 [a] 달다 매다 벗다 신다 쓰다 입다
    つるす 結ぶ 脱ぐ  履く かぶる 着る

    뜨다 마르다 변하다 솟다        차다
    浮かぶ 乾く    変わる  そびえる(湧き出る) 満ちあふれる

 [b] 가다 걷다 기다리다 놀다 내리다 달리다 먹다 보다 오다 오르다 울다 웃다
     行く  歩く  待つ    遊ぶ  降る   走る  食べる 見る 来る  のぼる  なく  笑う
    
읽다 추다
    読む  踊る

 [c] 가지다 (눈을)감다 맡다   의존하다 의지하다 잡다 지다 타다
     持つ   (目を)閉じる 引き受ける 依存する  もたれる  つかむ 背負う 乗る

    남다 눕다 (안으로)들다 (액체가)배다 뻗다 붓다 붙다 비다 서다 숨다 앉다 죽다
    残る 横になる (中へ)入る(液体が)染込む 伸びる 注ぐ 付く 空く 立つ 隠れる 座る 死ぬ

 [d] 그치다 결혼하다 느끼다 다치다 닮다 미치다 반하다 보태다 식다 입학하다
      やむ  結婚する  感じる けがをする 似ている 及ぶ   ほれる  補う  さめる 入学する

  おどろくべきことに、韓国語の動詞では[d]に分類されるものが とても おおいのである。しかし、
これは わたしたちの素朴な実感に反する。その理由は、アスペクト形式の とりかたにある。

 

 

進行相

結果相

自動詞

-고 있다

-어 있다

他動詞

-고 있다

 

油谷は、これにしたがい、「-고 있다」か「-어 있다」の形式をとるかどうかという観点だけで分類した。
つまり、過去形「-었다」の形式が もっぱら「結果相」のアスペクトをになう動詞があることが考慮されて
いない。


6.しきりなおし(「タ形」の意味)

 生越(1997)によれば、

生越(1997)があげた若干の例文と、より簡潔に要約された結語を示しておく。


7.「結果の残存」をかんがえなおす (ディスコースパターンの類型)

ここでのCの発言は、4), 5)ともに「~ませんでした」「~なかった」にすることができないが、韓国語であれば
「안 -었습니다」「안 -었다」の形式で言えるところであろう。5), 6)の会話全体が単純過去のテンスのもの
ではなく、現在のテンスにおける完了相(パーフェクト)のものであることは、

と対比してみれば明らかであろう。つまり、日本語の「-た/だ」は、テンスとしての過去を表したり、現在に
おける完了相を表したりするが、現在における完了相を表すことができるのは、肯定形に限られている。
これは実用会話のなかでもしばしば問題にされる韓国語との違いである。

  このことをふくめて、結果の残存を表す動詞の形式は、肯定・否定で次のような形式をとる。

・ 「あなたは結婚しましたか」が誤文であるとすれば、その場合にはA)は
 使えず、B)の形だけが許されていることになる。それは、なぜなのか。

 工藤真由美(1995)は、つぎのように かいているが、この一般的な傾向からだけでは、「結婚していますか」
の例を説明できない。

  この質問をしているときに、「既婚である」ということが「結婚する」という〈動き〉の完成相であることはほと
んど意識されない。ただ、現在を貫いて継続している相手の状態を尋ねているだけである。そのことが、
完成相の形式の派生用法をきらい、継続相の形式の派生用法を選ばせているのではないか。同様な例に、
「立っていますか」というのがある。「立ちましたか」ときくのは、さらに時間をさかのぼって立つことが予定され
ていることが了解事項であった場合だけである。そこで ここに、

という命題を加えることを提案する。


8.「しる」と「わかる」

  「知ります」も「気に入ります」も、動詞の表す〈動き〉の始まりが明確でない。いつ「知った」かわからない
ということがほとんどである。そういうことと関係があるのではないだろうか。スタートが常に否定形で、ゴール
だとわかったときにはすでに完成しているような〈動き〉が、まれに存在する。日本語はたまたま、そういう
動詞に特別の形を用意することができたということだろう。

  「わかる」も不思議な ふるまいをする動詞である。「わかる」「わかった」「わかっている」の3つが、すべて
テンスとしては「現在」のうえに ならびうる。「しる/しっている」と「わかる」の区別、「しらない」と「わからない」
との区別など、従来の説明でも じゅうぶんに解明できていないと おもわれることは おおい。

 

わかる   ○--->>---●

わからない ○----->    
         >-----●

  ○->>-----●
  ○-->>----●
☆{ ○--->>---● }★
  ○---->>--●
  ○----->>-●

            
わかった

    わかっている
☆  --------  ★

☆0----⇒×  しらない
       ↓     ↓
       ★0 (
しるしった
↓               ↑
☆1----⇒↓
       ★1

☆2----⇒↓
       ★2

☆3----⇒↓
       ★3
   …       
しっている

☆n----⇒↓
       ★n

? ----⇒↓
       ×  
しっていた
 

 


 引用文献


ゆたに・ゆきとし   油谷 幸利  1978 現代韓国語의 動詞分類 -aspect를 中心으로-
                          「朝鮮学報」Vol.87(韓国語)
きんだいち・はるひこ 金田一 春彦 1955 日本語動詞のテンスとアスペクト   「名古屋大学文学部研究論集」Ⅹ
                          『日本語動詞のアスペクト』 1976 むぎ書房 所収
ふじい・ただし    藤井 正   1966 『動詞+ている』の意味
                          『日本語動詞のアスペクト』 1976 むぎ書房 所収
よしかわ・たけとき  吉川 武時  1973 現代日本語のアスペクトの研究
                          『日本語動詞のアスペクト』 1976 むぎ書房 所収
おくだ・やすお    奥田 靖雄  1977 アスペクトの研究をめぐって-金田一的段階- 
                          宮城教育大学「国語国文」8号
おごし・なおき    生越 直樹  1997 朝鮮語と日本語の過去形の使い方について-結果状態形との関係を中心に-
                          「日本語と外国語との対象研究」Ⅳ
                          『日本語と朝鮮語』下巻  研究論文集」 1997 国立国語研究所
くどう・まゆみ    工藤 真由美 1995 『アスペクト・テンス体系とテクスト』  ひつじ書房
いまむら・かずひろ  今村 和宏  1996 『わざ-光る授業への道案内』      アルク 
 
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