発言者: きんちょ
発言日: 01/06/09(Sat) 14:20
Sakananomeさんの指摘のなかで、以下の部分は引用の事実関係に かかわるものですので、説明させていただきます。
----[きんちょの投稿(495)のなかでの紹介]------------------------
● 久野ワ 『新日本文法研究』1983
以下のような記述があるそうです。(いまのところ、『モダリティの文法』益岡 からの マゴびきです。すみません)
日本語の否定辞「ナイ」と疑問助詞「カ」のスコープは
極めて狭く、通常、その直前の動詞、形容詞、「Xダ/
デス」に限られる (P.140)
この原則により、
(5) 君はパリで時計を買いましたか。
(6) *君はこの時計をパリで買いましたか。
(7) 僕は終戦の年にはまだ生まれていなかった。
(8)??僕は終戦の年には生まれなかった。
を説明し、(6)が非文なのは、焦点であるべき「パリで」が疑問の「カ」のスコープに おさまらないからで、(8)が非文なのは、焦点であるべき「終戦の年に」が否定の「ナイ」のスコープに おさまらないのに対して、(5)(7)の焦点は「買いました」「生まれている」だから、それぞれ「カ」「ナイ」のスコープに おさまるのだと主張したそうです。
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これに対して、Sakananomeさん(504)から、以下のような指摘が ありました。
----[Sakananomeさん 504]-------------------------------
このように益岡には書かれているのですが、
(6)はどう考えても非文ではないと思います。
原本をあたってもこのような例文はのっていません。
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ここでは非文かどうかの議論には たちいらず、引用の事実関係のみ説明します。
1. わたしが「マゴびき」だと ことわって紹介したのは、上記のとおり『モダリティの文法』(益岡 隆志 1991 くろしお出版)の63頁に ある記述の一部です。例文も そのまま うつしました。
2. ただし、『モダリティの文法』の63頁には、うえの例文の直前に、以下のような記述があります。
この問題を検討する前に、久野(1983)の
論点を見ておこう。久野は、(5)と(6)、
(7)と(8)等に見られる文法性のちがいに
着目する。
そして、この末尾(「着目する」の右肩)に注が付されています。その注記を以下に引用します。
以下の(5)〜(10)の例は、久野(1983)で
挙げられている例に最小限の手直しを
加えたものである。なお、疑問助詞「か」
を含む文は、丁寧体の文の方が自然で
あるので、ここでは、疑問文の例は丁寧
体のものを用いることにする。
3. 久野ワの『新日本文法研究』(1983 大修館書店)にも あたることができたので、原本にしたがって、確認したことを追加しておきます。
『新日本文法研究』の137頁に、以下の例文が あります。表記法をふくめて直前から原文のまま引用します。ただし、原文では、太字になっている部分があるので、その太字の部分を《 》にいれて表示します。
|
| 先ず、次の例を参照されたい。
|
| (59) a. *君ハ《1930年ニ》生マレタカ。
| b. *君ハ《東京デ》生マレタカ。
| c. *君ハコノ時計ヲ《パリデ》買ッタカ。
| d. *君ハコノ写真ヲ《パリデ》撮ッタカ。
|
| 上例は、全て、動詞以外の要素が、「穴埋め式」焦点と
| なっているものである。これらの文の不適格性これらの
| 文の不適格性は、次の疑問文の適格性と、面白い対象を
| なす。
|
| (60) a. 君ハ1930年ニハモウ《生マレテイタ》カ。
| b. 君ハパリデ時計ヲ《買ッタ》カ。
| c. 君ハパリデ写真ヲ《撮ッタ》カ。
| d. 君ハスシガ《食ベタイ》カ。
| e. 君ハ今カラ直グ《出カケラレル》カ。
|
また、125頁に以下のとおりの記述があります。うえと同様に、太字の部分は《 》で くくって引用します。
|
| 次の対比を観察されたい。質問の焦点と解釈する
| ことを要求する要素を太字で示す。
|
| (16) A. 君ハ《終戦ノ年ニ》生マレタノカ。
| B.*ウン,φ,生マレタ。
| (17) A. 君ハ終戦の年ニハ《モウ生マレテ》イタカ。
| B. ウン,φ,モウ生マレテイタ。
|
それでは。
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