つぶやき会議室

つぶやきなのに、会議室です。会議室ですが、つぶやきます。

1998/06/14(20:40) from 164.124.67.159
作成者 : きんちょ (AKIZUKI@chollian.net) アクセス回数 : 93 , 行数 : 198
強制連行と軍・政府の責任
     強制連行と軍・政府の責任

 わたしが「【慰安婦問題】強制連行について」と題してこ
こに投稿した文章について、おなじ この場で反論がありま
した。ここでは、前回につづいて、「強制連行」について、
軍や政府の責任が とえるかどうかについて、かんがえてみ
ます。

 まず、わたしの もとの文章では、この点について、以下
のようにかいています。

    命令したのは軍隊でした。それは、戦争をしている
    ところに慰安所をつくったのですから、軍隊が、
    「わかい おんなをあつめてくれ」と いって、戦
    争をしているところにまで つれていかなければ、
    「慰安婦」に することが できなかったからです。
    
これに対して、つぎのような反論がされています。

    業者がダマしたり、借金で縛って連れてきたケース
    はあるとおもいます。しかしそれはいつの時代も貧
    困の中で生まれる悲劇であり、日本の責任を問える
    ものではありません。これらを「強制連行」と定義
    する事は全く構いませんが、ここから「軍の責任」
    へと話を発展させるのはあまりに飛躍が激しいと言
    わざるを得ません。

 わたしが問題にしていたのは、連行してくるときの「手口」
ではありません。軍隊が「どこどこまで、慰安婦にする女性
何人、つれてきてくれ」と指示したのではないかということ
と、戦争をしているところにまでつれてきたのではないかと
いうことです。

 1点目に関していうと、ごく初期の慰安所では、軍隊がな
にもいわないのに、業者がうりこみにきたようなことが、あ
ったかもしれません。しかし、戦況が悪化したなかで、戦地
につくられた慰安所に、軍隊からの依頼もなしに業者がうり
こみにいくなどとは、どうにも かんがえられないことです。

 つぎに、慰安所までの連行についてですが、連行の最初の
場面で、業者がどのような方法で女性たちをあつめたかに 
かかわらず、慰安所までの連行の最後の場面では、軍が直接
に連行したり、通行に特別の配慮をしています。軍は、強制
連行には関係しなかったのではなくて、強制連行の途中で業
者からバトンタッチして、連行する主体になっているのです。

 反論された方は、

    船によって海外へ渡航する際の軍の関与をあたかも
    強制連行に加担したものであるかのように書いてお
    られますが、これでは単に「軍が犯罪をやっていた
    かも…?」と匂わせるだけのイメージ操作の域を出
    ず、責任追及への根拠にはなり得ないと思います。

ともいっておられますが、海外にある慰安所につれていく 
ばあい、海外へ渡航させることは、強制連行に付随したこと
ではなくて、強制連行の必要不可欠な一部分です。連行の最
初の場面と、海外へ移送する場面は、どちらがかけても 連
行が完遂せず、相互に意志の疎通がなければ全体の実行が不
可能なことです。この意味において、両者は一連の行為とい
うべきであり、海外への渡航の時点での軍の加担は、強制連
行全体への加担であり、業者との関係でいえば、共犯という
よりは共同正犯であると断じざるをえないのです。
 (もし業者が、強制連行という目的からみても合目的的で
  ない暴力を 軍にひきわたす前にふるい、そのことによ
  る被害が生じたのであれば、その部分についてまで軍の
  責任を問うことはできないという議論はできるかもしれ
  ません。しかし、いままでのところ、その種の うった
  えをしているひとは いないとおもいます。)

 さらに、このような場合、海外へ移送すること自体が、単
独でも犯罪を構成しうることであったということが、去年8
月の毎日新聞の記事[*下記参照]からもいえることなので
す。こういう判例があったのにもかかわらず、慰安婦の移送
を軍がおこなっていたことをしめす文書は、かなりでてきて
います。単に、よくしらべないで通行許可をあたえたという
ような、消極的関与であったなどといってすませることはで
きません。軍は、目的のあきらかでない人物には、たちいり
を ゆるさなかった(そもそも その手段もなかっただろう)
支配地域へも、慰安婦とするべき少女たちを つれていって
いるのですから。そのなかで、慰安所についてから「自分の
意志できたのではない」とうったえたけれども、そのまま「
慰安婦」にさせられた女性がいたことは、日本人の証言と被
害者の証言が一致しているのですから、軍のしたことは 当
時の日本の法にてらしてみても、過失ではなく、故意の犯罪
である うたがいが つよいとおもいます。

 また、わたしが、

    だましたり、おどかしたりして、いえからつれてい
    ったひとは、一番、したのひとです

と かいたことに関して、その「根拠」が問題にされました
が、単純なことです。当時、日本軍はおおきな権力をもって
いました。「内地」でもそうでしたから、植民地朝鮮で、女
衒の業者がまっこうから軍にさからえるはずがありません。
日本軍にひきわたされることになる少女たちをあつめる業者
が、日本軍よりうえのわけが、ないではありませんか。もし、
軍が直接、奴隷狩りのような連行をしていたのだというのな
ら、はなしは別ですけれども。

 この、わたしへの反論にかんして、わたしは、もうひとつ、
いっておきたいことがあります。それは、
 
   「業者がダマしたり、借金で縛って連れてきたケース
    はあるとおもいます。しかしそれはいつの時代も貧
    困の中で生まれる悲劇」だ

というような かんがえかたについてです。いつの時代もそ
うかどうかは ともかく、貧困から みうりのようなことが
おこなわれたということは、どのくににも あったことかも
しれません。しかし、くにの 軍隊が、みうりされた 少女
を かうがわにまわり、さらにその数を必然的にふやしたり、
もっと暴力的な らちまがいのことが横行する結果をまねく
ことが容易に想像できる政策をとり、事実そうなっているの
に その政策をつづけたというのは、どのくににも あるこ
とではありません。そこには、「内鮮一体」などといいなが
ら実際は「内地でなければなにをやってもいい」と思ってい
た、差別的な植民地支配の本質があらわれていると、わたし
はおもいます。
 (去年8月の毎日新聞の記事[*下記参照]にあるような
  判例や とりしまりを指示した記録が、日本内地からの
  移送についてだけあり、植民地からの慰安婦としての連
  行に関しては、判例集や公開されている資料を精細に調
  査してもみつからないということが重要です。)


 次回は、このことに関連して、小林よしのり氏が、「バカ
ボンのパパのような乱暴な3段論法」と表現した議論に関し
て検討していく予定です。


  [*]1997年8月6日付 毎日新聞の記事

  <特報・従軍慰安婦>大陪審昭和12年判決 
            連行の経営者有罪
            
   戦前、中国・上海の海軍慰安所で「従軍慰安婦」とし
  て働かせる目的で、日本から女性をだまして連れて行っ
  た日本人慰安所経営者らが、国外移送目的の誘拐を禁じ
  た旧刑法226条の「国外移送、国外誘拐罪」(現在の
  国外移送目的略取・誘拐罪)で1937(昭和12)年、
  大審院(現在の最高裁)で有罪の確定判決を受けていた。
   在日コリアンや日本人の学者、弁護士らでつくる「朝
  鮮人強制連行真相調査団」(東京)が大阪府立図書館の
  「大審院刑事判例集」で確認した。同調査団は「強制連
  行は国内法で裁くことはできないというのが定説で、十
  分に調査されていなかったことと、日本政府もこの判例
  を前提に動いてこなかったため、これまで確認できなか
  った」と説明している。

   「国外移送誘拐被告事件」と題されたこの判例による
  と、事件の概要は、上海で軍人相手に女性に売春をさせ
  ていた業者が、32年の上海事変で駐屯する海軍軍人の
  増加に伴い、「海軍指定慰安所」の名称のもとに営業の
  拡張を計画。知人と「醜業(売春)を秘し、女給か女中
  として雇うように欺まんし、移送することを謀議」し、
  知人の妻らに手伝わせ、長崎から15人の日本人女性を
  上海へ送った。下級審は「婦女を誘拐して国外に移送し
  た」と有罪判決を言い渡した。

   被告人は計10人にのぼり、このうち、経営者ら6人
  は「謀議には加わったが、女性を上海へ送る実行行為に
  は関与していない」などとして、大審院に上告。37年
  3月、大審院第4刑事部は「共同正犯」として上告を棄
  却した。訴訟の経緯や量刑は記載がなく不明。

   さらに、日本が植民地統治時代の朝鮮で1921年、
  朝鮮高等法院(最高裁にあたる)が、妻をだまして中国
  へ移送した朝鮮人男性に国外移送罪を適用した判例も見
  つかった。当時の朝鮮や台湾では、日本の刑法がそのま
  ま適用されていた。朝鮮半島では、工員などとだまされ
  て慰安所に連行された女性が多いとされ、これらのケー
  スも法令上は国外移送罪にあたる可能性が強い。

   従軍慰安婦の教科書記載をめぐる論争では、「官憲の
  暴力」のみを強制連行とする主張があるが、大審院の判
  決は、本人の意思に反する連行は犯罪と認め、強制連行
  を広くとらえる資料となる。

   同調査団は「慰安婦の強制連行が、国内法でも犯罪だ
  ったことが明白になった意味は極めて大きい。同種の事
  例で処罰していないケースについて、日本政府は責任を
  免れない。政府の補償責任が問われるのは必至」と評価
  している。
         (以下省略)
            -------------------------

  [**]この事件で問題になった国外移送目的略取・誘拐
    罪の条文は下記のとおり。(原文は旧かな旧漢字)

    《旧刑法・226条》
    
     帝国外ニ移送スル目的ヲ以テ人ヲ略取又ハ誘拐シ
    タル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ処ス。帝国外ニ移送
    スル目的ヲ以テ人ヲ売買シ又ハ被拐取者モシクハ被
    売者ヲ帝国外ニ移送シタル者マタ同ジ。

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